
「最近、手がしびれる…」「親指や人差し指に違和感がある」「細かい作業がしづらくなった」
このような症状がある方は 手根管症候群 の可能性があります。
手のしびれや痛みは日常生活に大きな影響を与えるものの、「そのうち治るだろう」と放置してしまう方も多いのが現実です。
しかし、放っておくと悪化し、最悪の場合は手の筋力が落ちてしまうことも…。
私が整体師としての道を歩み始めて18年。数多くのクライアントと向き合う中で、特に印象に残る症状の一つが「手根管症候群」です。朝起きると指がこわばり、夜中に手の痺れで目が覚める—そんな悩みを抱えた方々と数多く向き合ってきました。
手根管症候群とは?
手根管症候群は、手首にある「手根管」と呼ばれるトンネル状の部分で 正中神経(せいちゅうしんけい)が圧迫されることで発生する症状 です。
この症状に悩む方は年々増加しており、特にデスクワークやスマートフォンの普及により、若年層での発症も珍しくなくなりました。
典型的な症状は:
- 親指、人差し指、中指、薬指の半分のしびれや痛み
- 朝起きた時の手のこわばり
- 手首を曲げる動作での痛みの悪化
- 物をつかむ力の低下
手根管の中には、
☆ 正中神経
☆指を動かす腱(腱鞘)
が通っていますが、何らかの原因で 手根管が狭くなると神経が圧迫され、しびれや痛みが出る のです。
特に影響を受けるのは 親指・人差し指・中指・薬指の半分 で、進行すると物をつかむ力が弱くなることもあります。
忘れられないのは、7年前に来院したプロのピアニスト、高橋さん(仮名)のケースです。彼女は40代半ば、国内外で活躍するキャリアのさなかでした。
「最近、演奏中に右手の親指から中指にかけてビリビリとした痺れが走るんです。特に高速のパッセージで。病院では手根管症候群と診断されて、手術を勧められました。でも...」
彼女の目には不安と焦りが浮かんでいました。演奏家にとって手術は大きな決断です。「まずは手術以外の選択肢を模索したい」という彼女の願いに、私は全力で応えることを決めました。
手根管症候群の原因とは?
手根管症候群の原因はさまざまですが、整体の視点では 腕・手首・肩の筋肉や姿勢の影響が大きい と考えています。
手根管症候群を引き起こす主な原因
🔹 手首の使いすぎ(腱鞘炎)
→ パソコン作業・スマホ操作・編み物・ピアノ演奏 など、手を酷使する動作で発症しやすい。
🔹 姿勢の悪さ(猫背・巻き肩)
→ 肩が内側に入ると神経の通り道が狭くなり、手のしびれにつながる。
🔹 首・肩の筋肉のこわばり
→ 首や肩の筋肉が硬くなると、神経が圧迫され、手のしびれにつながる。
🔹 ホルモンバランスの変化(更年期・妊娠中)
→ 女性ホルモンの影響で手根管がむくみ、神経が圧迫されやすくなる。
高橋さんの施術を始める前に、私は彼女の姿勢や動きを観察しました。整体師として18年、私が最も大切にしている視点は「局所だけを見ない」ということです。
驚いたことに、高橋さんの右肩は明らかに前方に巻き込み、首は右に傾いていました。ピアノを弾く姿勢を再現してもらうと、右肩が無意識に持ち上がる癖があることに気づきました。
「病院では手首だけを診られたでしょうが、手根管症候群の多くは、実は肩甲骨から腕、前腕の筋肉の緊張が連鎖的に手首に負担をかけているケースが非常に多いのです」と説明しました。
整体でできる手根管症候群のケア
1. 手首・腕の調整
手根管が狭くなっている場合、手首の使いすぎによる 腱の炎症や筋肉の緊張が原因 になっていることが多いです。
前腕の筋肉をほぐし、緊張を解く
手首の関節の可動域を広げる
これだけでも、神経の圧迫が緩和されるケースがあります。
2. 肩・首の調整
手の神経は 首から伸びている ため、首や肩の筋肉が固まると 手根管にも負担 がかかります。
肩甲骨をゆるめることで、神経の流れをスムーズにする
首・鎖骨周辺の筋肉をほぐし、血流を促す
高橋さんには、次のような段階的なアプローチで施術を行いました。
1. 首・肩のリリース:まず、胸鎖乳突筋や斜角筋、小胸筋など、腕への神経の通り道となる筋肉の緊張をほぐします。これが意外に重要なステップでした。
2. 腕のディープワーク:前腕の深層筋、特に円回内筋や深指屈筋などに対して、丁寧にアプローチ。「え、そこを押すと指先まで響きます」と高橋さんは驚いていました。
3. 手首周りの除圧:手根管部分の靭帯や筋肉の柔軟性を高め、神経への圧迫を和らげます。
4. 全身の姿勢調整:最後に、ピアノ演奏時の姿勢を見直し、肩甲骨の位置や使い方を調整しました。
高橋さんの治療は週2回のペースで始め、約2ヶ月で週1回に減らしました。3ヶ月目には症状が劇的に改善。6ヶ月後には小さなリサイタルに挑戦できるまでになりました。
「先生、信じられないくらい調子がいいんです。先日は2時間のコンチェルトを弾ききることができました。手術をしなくて本当に良かった」彼女の笑顔を見た時、整体師としての私の喜びは頂点に達しました。
手根管症候群は、放置すると悪化し 手の筋力低下や痛みの慢性化 につながることもあります。
整体では、手首だけでなく 腕・肩・首のバランスを整えることで、症状の改善をサポート します。
「手のしびれが気になる」「手術はできれば避けたい」
そんな方は、ぜひ 整体の施術を試してみてください!
手術が必要なケースももちろんあります。しかし、多くの手根管症候群は、適切な整体ケアと生活習慣の見直しで改善する可能性を秘めています。
18年という時を経て、私はますます整体の可能性を実感しています。一人一人の体の声に耳を傾け、個別の状態に寄り添うことで、薬や手術に頼らない回復の道を見出せることが、整体師としての私の誇りであり、喜びなのです。
あなたの手に痺れや痛みを感じたら、ぜひ一度、整体的アプローチを試してみてください。体全体の繋がりを紐解くことで、新たな回復の可能性が開けるかもしれません。